労働市場での女性の活用

労働市場での女性の活用」が安倍総理の肝いり政策として取り沙汰されています。
採用活動や部下育成だけでなく、職場環境そのものに関する議論においても、なにかと女性の雇用に紐づけて議論されます。
しかし、働く女性は大きく以下の2つのタイプに分かれるにもかかわらず、どちらにも顔を立てようとして玉虫色の政策になっているように思えます。

  • 【タイプ1】男性と同様に出世コースを歩みたいが、女性であることを理由に周囲から適正な人事評価が行われない*1
  • 【タイプ2】職場での肩書きや地位にこだわりはなく、むしろ子育てに十分時間をかけたいが、配偶者の収入を補うためには専業主婦やパートでは足りず、正社員としての給料は望んでいる。

【タイプ1】に関して、「優秀なのに女性であることを理由に人事評価が低くなる」ということは、現在はほとんどないように思えます。ただし、「女性であることを理由に【タイプ2】であると偏見を持たれ、成長機会が与えられない。その結果、同期の男性社員と同じ努力をしても成長速度が遅くなる」ということはあるかと思います。
【タイプ2】に関して、周囲から【タイプ1】だと思われて数々の成長機会を与えられるにもかかわらず、それを生かした昇進のための自己研鑽を行わず、周囲を失望させてしまうのはお互い不幸だと思います。また、【タイプ2】の学生が就職活動で【タイプ1】のような先輩OGに会わされたら、その会社そのものを敬遠してしまうでしょう。

以上のように、【タイプ1】と【タイプ2】を明確に区別することが重要です。そこで、以下の2つが求められるのではないでしょうか。

  • 総合職⇔一般職の職種変更の柔軟化
  • 男性の一般職への職種変更促進

入社時点では【タイプ1】と【タイプ2】を「総合職」「一般職」と一応区別していますが、入社後の環境変化には対応しきれないように思えます。そのため、総合職の女性が子育てとの両立に悩み、退職してしまうケースが多いように思います。そこで、「子供が小学校に上がるまでの期間だけ一般職として短時間勤務し、その後総合職に職種変更する」などの柔軟な対応ができれば会社としても人材の流出を抑制できるはずです。
また、夫婦ともに総合職の役付きの場合、親御さんが近くに住んでいて関係が良好であるなどの事情がなければ、子育てとの両立はなかなか難しいと思います。そこで、夫婦が時期をずらして(例えば4年間ずつ)一般職として短時間勤務するという選択肢も求められるのではないでしょうか。
現状では一般職の男性は少なく、「総合職になれなかった人」といった偏見をいただかれるでしょうが、今後は男性が胸を張って一般職を名乗れる社会が必要かもしれません。

*1:【タイプ1】の中には、「出産・育児のブランクが昇進の阻害要因となることを自信が危惧している」という声も聞きます。これは、それまでの勉強の蓄積に基づいて新しいことを学んできた大学生に多い誤解ですが、成長著しい一部業種の専門職を除いては、休んでいた期間の出来事を復職時にすべてキャッチアップしなければならないということはありません。むしろ大企業では定期的な人事異動で業務内容が一変することも珍しくないため、仕事のやり方という基本だけ押さえていれば、仕事のブランクによって課長としての素養が失われるということはないはずです。むしろ本文で述べているように、【タイプ1】の女性が【タイプ2】であると偏見を持たれることが問題です。