原材料に含まれるアレルゲン

今日、風邪で病院に行ったらラックビーという整腸剤を処方されたのですが、家に帰ってから病院から電話がかかってきて、
「ごめんなさい。ラックビーは乳糖が含まれているから、牛乳アレルギーのあなたは飲まないでください」
と言われました。


   え? 乳糖って、化学でいう「ラクトース」でしょ? アレルギーはタンパク質に対して起こるんだから、糖は大丈夫なんじゃないの?

と言って、ググってみたら、どうやらそうではないようです*1 *2




H−8 乳糖の表示に関する厚生労働省の見解を教えて下さい。


 乳糖の表示に関しては、幾つかの経緯を経て現在に至っています。


1.  平成12年11月30日付け食物アレルギーの実態及び誘発物質の解明に関する研究班からの「アレルギー物質を含む食品に関する表示について」報告書において、「乳糖については、本来精製が完全であり、蛋白質の残存がなければ発症しないと考えられ、乳糖と表示されるのであれば乳成分を含む旨の表示は必要ないと考えられるが、今後の調査で蛋白の残存の知見や症例が判明したとき再検討を行う。」とされていました。これを受けて、平成12年12月26日、食品衛生調査会常任委員会より厚生大臣に対して、この報告に基づいた意見具申がなされ、その中で、「乳糖については、蛋白質の残存がないものについては、乳糖と表示されるのであれば、乳成分を含む旨の表示は必要ない」としました。


2.  食品衛生法施行規則の一部改正に伴い、平成13年3月21日付食企第4号、食監発第48号のQ&Aでは、B−9『乳糖は精製が完全であり、蛋白質の残存がなければ、抗原性がないとの見知があるため特定原材料表示は必要ありません。 ただし、今後新たな知見が得られた場合は再検討されることとなっています。』と記載しており、乳糖は精製が完全であること、及び蛋白の残存が見られないものついては、アレルギー表示は不要としました。


3.  平成13年6月15日付事務連絡によるQ&Aの追加においては、H−8『精製が完全な乳糖は表示を不要としていますから、この場合は「乳」という文字を使われていても食品としての抗原性がはっきりと分からないので、カゼインナトリウムの(乳由来)を省略する事はできません。』と述べています。つまり乳糖については、「乳」の代替表記ではないことを示し、蛋白の残存のある乳糖に関しては、乳糖(乳由来)と記載して頂くこととしていました。


4.  平成13年8月29日より、「アレルギー表示検討会」において、アレルギーを誘発する最少蛋白量が検討され、平成13年10月29日付アレルギー表示検討会中間報告が出され、その結果を踏まえて平成13年12月28日付事務連絡によるQ&Aの追加がなされました。その中で、B-14 『食物アレルギーを起こしうるアレルギー物質の含有量は数μg/gレベルであり、ng/gレベルでは一般にアレルギー反応を誘発する事は少ないであろうと考えられていることで意見が一致した・・・』との見解が得られたことより、アレルギー表示を必要とする蛋白質の最小量の基準が規定され、乳糖についても、この基準が準用されることとなりました。


5.  乳糖の精製度については、乳糖関係数社よりデータの提供を受け、

(1)  アレルギーを起こさないと考えられていた「精製が高度な乳糖」についても、蛋白質が残存していること。
(2)  一般に市場に流通している「精製が高度な乳糖」についても、蛋白質が0.3%程度残存すること。
が判明しました。さらに、アレルギー表示検討会より、
(3)  乳糖についても、中間報告で出された微量の定義を適応する必要があること。
(4)  乳糖には「乳」の文字が含まれることより、「乳」の代替表記として認めることが妥当である。


との見解が示されました。
 しかしながら、「乳糖」がアレルギー物質と認識されていなかったことより、対応が遅れていることも考慮し、経過措置の期間を設けることが必要であることも述べられています。


H−9 乳糖の表示は、具体的にはどのようになるのでしょうか。


 厚生労働省では、H−8の経緯及びアレルギー表示検討会での検討結果を受けて、
1.  「高度に精製された乳糖」についても蛋白質の残存が認められることより、残存蛋白量で表示の必要性の有無を判断すること。
2.  乳糖には「乳」の文字が含まれることより、「乳」の代替表記に追加すること。
 としています。

厚生労働省:アレルギー物質を含む食品に関する表示について http://www.mhlw.go.jp/topics/0103/tp0329-2b.html


要するに、主成分の乳糖自体はアレルゲンではないけれど、通常、乳糖は牛乳から精製するため、アレルゲンとなるタンパク質が残存する可能性があるということです。


さらに、


乳糖を「乳」の代替表記に追加する
とあります。つまり、「乳糖」という記述から、微量の牛乳由来のタンパク質が含まれていることは判別できるので、乳糖以外の要因で牛乳のタンパク質が混入する可能性があっても、わざわざ明記しないですよ、ということです。(通常は、コンタミの恐れがあるときは「(原材料に乳を含む)」という但し書きがなされます)


そうだったのか・・・。いつも食べ物を口にするときには、「原材料」欄を見てるのですが、乳糖が含まれていてもフツーに口にしてました。。。


と言っても、アレルギー反応っていうのは発作が起きる/起きないの二者択一ではなくて、以下のような段階があります。


手の指の関節の部分が赤く腫れる

手の荒れがひどくなって、指に擦り傷のようなものがたくさんできる

唇がかゆくなる

唇が腫れるとともに、喉の奥がかゆくなる

(そこから先はあまり経験がないので分からない)

すぐに救急車を呼んだり、エピペンを注射するような発作は、20年以上起こしていませんが、上に挙げた程度の症状は頻繁に起きています。例えば、殺した直後の魚で刺身を作った場合、食べても何も症状はないのですが、少しでも古い魚で作った刺身の場合は唇がかゆくなります。この程度であれば内服薬で治るのですが、念のため生の魚は食べないようにしています。手の荒れがひどくなることはもっと頻繁にあるので、いちいち原因を追究しません。
もしかしたら、今までの症状は乳糖や、その他の乳成分が原因だったのかも。。。



ちなみに、外食するときに店員に原材料名を聞くと、店員がアレルゲンだと誤解することの多い成分が、「乳酸」と「乳化剤」です。
例えば、下の写真は、家にあったアクエリアスの原材料名です。高校の頃は運動部だったので、アクエリアスを毎日飲んでいました



「乳酸」とありますが、これは人間が筋肉を動かした時にも溜まる物質で、全く牛乳とは関係ありません。大豆や動物の肉から抽出するのでしょうか。。。
また、これと紛らわしいのが「乳酸菌飲料」で、これは牛乳アレルギーの人は摂取してはいけないケースもあります


(参考)
上記の8品目の乳酸菌製剤は、98年5月12日付の厚生省通知により、添付文書中の「禁忌」の項に牛乳アレルギー患者が新たに記載されるようになりました。これらの製剤が禁忌になったのは、製造過程における凍結乾燥の際、菌安定化のために脱脂粉乳を使用しているため、牛乳アレルギー患者ではアナフィラキシー等のアレルギー症状が発現する可能性があるからです。実際に副作用症例が報告されている薬剤もあります。


一方、乳酸菌製剤の中には、製造過程で脱脂粉乳を使用していない製剤でも、菌培養の培地成分にペプトンなどの牛乳タンパク由来成分を使用している場合があります。98年の通知では、上記8品目以外は牛乳タンパク成分の含有量がごく微量であるという理由で禁忌にはなりませんでしたが、厳密に考えれば、牛乳アレルギーの患者さんは両者を一切使用していない乳酸菌製剤(ミヤリサンBM,レベニン、ビフィダーなど)を選択するのが適当です。


次に誤解されやすいのが、「乳化剤」。これは、特定の物質名を指すわけではなく、乳濁した物質全般を表す呼び名です。
もちろん、卵や大豆のようなアレルギー物質から乳化剤が作られることもありますが、その場合は「乳化剤(卵由来)」のように表記されるので、何も書いてなければ少なくとも僕の持っているアレルギー(卵・牛乳・ピーナッツ)の範囲では問題ありません。


乳糖の場合はダメで、乳酸や乳化剤は良い。その境目はどこにあるのかと言うと、厚生労働省がきちんとリストを作ってくれています。



特定原材料等の代替表記方法リスト


厚生労働省:アレルギー物質を含む食品に関する表示について http://www.mhlw.go.jp/topics/0103/tp0329-2b.html


結局、あからさまに牛乳が含まれているもの以外で、牛乳アレルギーの人が気をつける必要があるのは、乳糖と乳酸菌飲料だけのようです。

*1:このエントリーの内容とは路線が外れますが、最近では「ラックビー」「ラックビー微粒」に関してのみ、牛乳アレルギーの人でも飲めるように製法が変更されているそうです。(ただし、「ラックビーR」は乳酸菌を使っているので飲めないそうです。)

*2:(翌日追記)脚注1に紹介したようなネット上の記述を信用して「ラックビー微粒」を一度だけ服用したんですが、整腸剤にもかかわらず逆にお腹の調子が悪くなったんですけど。。。