線形代数の定理
量子情報の教科書
- 作者: Michael A. Nielsen,Isaac L. Chuang
- 出版社/メーカー: Cambridge University Press
- 発売日: 2000/09
- メディア: ペーパーバック
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半正値演算子,,に対して、が成立するとする。
そのとき、の固有値を大きい順に、の固有値を大きい順にとする。
このとき、(for all )
つまり、大きい順に並べた固有値の、何番目同士を比較しても、必ずのほうが大きいというのだ。
え?直観的には全然自明じゃないよね・・・と思ってよく見ると、全ての計算はの中で行われている(それだったらA+B=Cの両辺traceとればすぐに示せる)。それまでにもこの教科書には、「定理の内容はあってるけど、この方法では導出できない」という議論がたまに見られたので、これもその類だろう、と思ったのですが、N君が「反例を探したけど見つからなかった」と主張しました。
このことを友人に談話室で話したところ、O君が証明を見つけてくれたので、E君の要望などもあったのでここに紹介しておきます。
(O君による証明)
<のとき>
説明の簡単のため、まずはのケースを説明する。後述のように、任意のに拡張できる。
背理法で示す。題意が成り立たないとすると、となる。(右辺の不等式のみ等号を含まないことが重要)
ここで、との固有状態の任意の線形結合で表される状態をとする:
()
そのとき、
となる*1。
このを今度はの固有ベクトルで展開する:
()
すると、
となる。最後の不等号は、ひとつ前の議論の結果である。さらにに注意すると
が成り立たなければならない。
しかし、もとのにおいて、
、 (は規格化因子を表す:)
のように選ぶと、
となるため、第1項がゼロになり、(第2項以下は全て0以下だから)この不等式は満たされず矛盾。 (証明終)
<のとき>
と仮定すると、上と同様の議論でが導かれる。
そして、の係数の組として
・・・
を満たすものが必ず存在する*2 *3ので、背理法によって、全てのに対してが成立することが導けた。 (証明終)