ポスドク問題への税金投与

今日、研究室の先輩にこんな記事を紹介されました。
ポスドク:1人採用で5百万円…文科省が企業に「持参金」 (毎日新聞 2009年5月6日 11時45分)


オーバー・ポスドク問題解決のために、ポスドクの就職支援を行うという趣旨で、世間の人には特にメリットのない税金投資なのは明らかなのですが、それでは研究職に携わる人にメリットがあるかというと、実はそうとも限らないのです。


一口に「ポスドク問題の対策」と言っても、主に2つの種類に分かれます。

  • 博士課程卒業後にポスドクにならずに安定した職につける制度を整えること
  • ポスドクになっても就職しやすい環境を整えること


前者のほうが社会制度としては理想だと思うのですが、前者には大きな欠点があります。それは、「現在ポスドク問題に苦しんでいる人にとって、メリットがない」という点です。
既にアカデミックポストに就いている人や、まだ学部や修士の学生は、ポスドク問題に関心が薄いようなので、ポスドク問題に関心が高い人の多くは現在ポスドクということになり、この政策は一定数の人口から評価されると思います。


でも、この政策は短期的にはプラスであっても、長期的に見ればマイナスですよね。
記事の内容を文字通り解釈すれば、「1か月でもポスドクを経験した人であれば、採用するときに支援金が貰える」ということになります。
となれば、企業としては、今まで博士課程卒の学生を採用していた枠をポスドク採用に回すことになり、結果として博士の学生が就職しにくくなるのではないでしょうか。


仮に博士過程学生の就職機会が減らないとしても、これまで通り博士3年次に就職活動をすると、
「博士課程卒業後、1か月どこかでポスドクをやったあと、5月から入社してください」
とかいう扱いを受けるのでしょうか。。。
それはそれで、いたずらに事務手続きを増やすだけだし、単なる税金の無駄遣いですよねぇ。。。