無粋な突っ込み ―『もしドラ』を読んで―
巷で話題の作品
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
- 作者: 岩崎夏海
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2009/12/04
- メディア: 単行本
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を読みました。以下では本の内容には触れますが、ストーリーをつまらなくしてしまうネタバレはしない予定です。
まずは感想ですが、ライトノベルとして読むなら割と楽しめます。でも、経営学の啓蒙書として直接的に役に立つかどうかは微妙です・・・。この作品を読むことによって、ドラッカーの原著に興味を持って、間接的に貢献することはあるかもしれませんが・・・。
ところで、ストーリーに関して「こんな机上の空論がうまくいくかよww」という以上に、細かい点でどうしても突っ込みたい点が二点あったので、その点だけ触れておきます。
★アウト・オブ・シーズンの存在
本書では、秋の大会が終わってから、練習試合の回数を増やしたそうです。
また、分析の指標の一つとして、定期的に練習試合を組むようにもなった。そこでの結果を、成長を図るデータとして活用しようとしたのだ。そのため、この時期を境に、程高の練習試合数は大幅に増えることになった。 (135ページ)
それ自体は問題ないのですが、本書の野球部は、春の大会の直前にも頻繁に練習試合を行っているようです。
また、練習試合でも徐々に成果が出るようになった。実力の指標とするため、同じレベルの都立校と毎週対戦を組んでいたのだが、最初は勝ったり負けたりだったのだが、少しずつ勝ち越すようになり、最近ではほとんど負けないようになった。 (141ページ)
実は、高野連の規定としてアウト・オブ・シーズンというものが存在し、冬の期間は練習試合を行うことができないのです。
アウト・オブ・シーズン(out of season)とは、いわゆるシーズンオフということ。
アウト・オブ・シーズン中は、練習に主点をおく事となっている。
高校野球では、この期間中は同一地域にあるといえども、他校との合同練習(一部許可)、練習試合はできない。期間は、12月1日より翌年3月第2土曜日までとする。
【練習試合解禁日】は、3月第2土曜日となる。尚、自校グラウンドで自校の部員を分けたり(紅白戦)、OBを加えて試合する事は差し支えない。
海外交流など特別な事情のある場合、日本高等学校野球連盟の承認を得たものはアウトオブシーズン中であっても試合することは差し支えない。
日本高等学校野球連盟の承認を得れば、合同練習も条件付きで認められている。
但し試合形式となるような事(シート打撃等)は行ってはいけない。
本書の著者は野球は専門外ですが、この点をご存じないのかな、と思ってしまいました。
★春の大会の存在
本書では、秋の大会に負けた後、次の夏の大会まで公式戦が行われないような書き方をしています。
「(中略)だから、それを踏まえて、今度は来年の夏を目指して、また新たな気持ちで頑張ろう」 (114ページ)
しかし、(甲子園には直結しないものの)春の大会は野球部員にとって大きな位置づけを占めています。
春季高校野球が各地で熱戦展開中。春季大会は甲子園には直結しないものの、夏の地方大会のシード権を決めたり、新戦力をチェックする重要な舞台。高校野球ファンにとって、見逃せない戦いが繰り広げられている。
確かに2003年度の秋大会までは、「秋大会で初戦負けすると春の大会に参加できない」という背水の陣でした。
しかし、僕が高校野球部を引退後の2004年以降は、(春に行われるプレ大会で勝てば)春の大会に進める制度になったそうです。(当時、既に現役ではなかったため、どのようなモチベーションでプレ大会に挑むのかは不明なのですが、少なくとも部員にとって「春の大会は眼中に無い」ということはないでしょう)
この点に関しても、著者が最近の制度をご存じなかったということでしょうか・・・。