Nielsen訂正表
量子情報の教科書
- 作者: Michael A. Nielsen,Isaac L. Chuang
- 出版社/メーカー: Cambridge University Press
- 発売日: 2000/09
- メディア: ペーパーバック
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というか、中には簡単に反例が見つかるものもあるから、きっと定理の条件を書き換えないといけないんだろうけど、どんな条件があれば定理が成り立つか考えるのは、普通に定理を証明するよりもずっと労力を消費するので、困っています。。。
訂正表のページを見ても、スペルミスや自明なミスしか載ってないし・・・。
もちろん、量子情報の研究者はこの本の全ての章に精通している必要はないわけだから、いくつかの章は筆者(=Nielsen)の専門外なわけで、ミスを記載したNielsenを責めるわけじゃないんだけれども、量子情報を専門にする学生はみんな読んでるはずなのに、なんで誰も訂正しないんだろう、と思う今日この頃です。。。
というわけで、僕が気づいたミスをここに列挙してみます。と言っても、ちゃんと読んだのは10章と11章だけですが…。
本当はNielsenにメールしようかと思ったんだけど、独りで考えてるとうっかりすることもあるだろうし、ここに書いて誰かの反論を待ったり、時間をおいてもう一度考え直してみてからメールしようかと思います・・・。
本当は優秀な人と一緒にゼミがやったほうが効率が良いんだろうけど、東京には量子情報に興味を持ってくれる人がいなくて・・・。
早く大阪の大学院の研究室に行って、量子情報の学生たちといろんな話がしたいなー! 不動産の都合で引っ越しは3月28日くらいになりそうなんですが、(東京の友達と離れるのは寂しいけど)マンスリーマンションを借りて2月から大阪に行こうかなー、なんて考えてます…。
<ミスの箇所が分かるもの>
- p.516, Exercise11.16
とありますが、基底が共通に選べるだけでは |i> ∝ ( |0>|0> + |0>|1> + |1>|2> ) などの反例があるし、アンサンブルの重みも共通に選べる、すなわち
... have a common eigenbasis, and the ...
と書き換えて初めて、必要条件を満たします。また、このとき十分条件も満たします*1。
... have common eigenvalues and eigenbasis, and the ...
<ミスの箇所が分からないもの>
- p.457, Exercise10.34
とありますが、後者は前者の十分条件でない気がします。
Let . Show that is not an element of if and only if for all , and for all .
反例:
の生成元として, を考える:
すると、, , , なので if 以下の条件を満たしているが、 となる。
それでは、この命題はが proper な場合、すなわち( はqubit のパウリ行列全体の集合(パウリ群)を表す)に限られるのかというと、そうでもありません。
となる反例:
2qubit状態のstabilizerの生成元として, を考えると、先ほどと同様に, , , を満たすが、 となる。
どうせこの命題は、必要条件を証明する段階でがの部分集合であることを使っている*2ので、あまり条件を加え過ぎると自明な命題になってしまい、どう訂正すれば良いか分かりませんでした・・・。
- p.512, Box11.2
とありますが、 = diag(1/3, 1/3, 1/3), = diag(1, 0, 0) とすれば という反例があるので、後半部分は不成立です。それでは、前半部分の が誤りかというと、今度はこの条件がないとが導けません(反例:)
By calculus whenever it follows that . A moment's thought shows that for all , so ...
だけ別個に扱うこともできないし、この方針だと命題が示せないような気がしてなりません・・・。
<その他>
- p.520のTheorem 11.12の証明過程で "For arbitrary matrices A and X" は、"A is a positive matrix" という条件を加えないと乗が定義できない
とか、
とか、理解の妨げにならないようなミスはいちいち挙げませんでした。。。