中学の物理の問題
今日、バイト先で中2の生徒に物理の質問をされました。
相互誘導に似た状況で、下図のように2つのコイルを近接させて一方のコイルに電圧をかけ、他方のコイルに生じる起電力を測定します。
通常の相互誘導の実験では左側の回路は交流電圧ですが、試しに電源装置のモードを直流にしたところ、左側の回路にかけた電圧と、右側に生じた起電力の関係が、
のようになったそうです。(一瞬針が振れただけではなく、20秒程度継続したそうです。)
5 [V] - 0.8 [V]
10 [V] - 1.6 [V]
15 [V] - 2.8 [V]
本来ならば右の回路には起電力が生じないはずなのに、実際には起電力が生じる理由を考察しなさい、という実験レポートでした。
理由を即答できなかった僕は、周囲の先生に聞いてみたのですが、皆さん
などを挙げていました。
- コイルを含む回路の電流が定常になるまでに時間がかかる
- コンセントから供給される交流電圧に対する整流作用が不十分
- 電圧計の精度が悪いことに起因する誤差
それに対する僕なりの反論としては、
- 直流電源による電流が緩和するまでに秒単位の時間がかかるはずがない。実際自己インダクタンス、抵抗の回路の時定数は なので、[mH]、程度の値を代入しても、 [sec]程度が上限で、とても[sec]程度になりそうにない。
- コンデンサによる整流は高周波成分を十分にカットするので、多少電圧揺らぎがあってもこれだけの起電力が生じることはないだろう。
- どんな電圧計を使ったのかは知らないけれど、中学の理科の実験で使うのはせいぜい上限5[V]程度だろうし、1[V]のオーダーの誤差があるとは思えない。。。
そこで、僕が苦し紛れに出した結論は、
というものでした。
本実験では抵抗をはさまずに、電源とコイルを直接繋いでいるため、回路には大量の電流が流れるだろう。
すると、大量のジュール熱が発生するために、温度上昇によって抵抗値が上昇し、(電圧は一定なので)に従って電流が(従って磁場が)減少するだろう。これによる誘導起電力が観察されている。
一見もっともらしいのですが、いくつか突っ込みどころがあります。
- 温度上昇とともに抵抗値が上昇するというのは、金属の場合には正しいが、今回の場合にも当てはまるのか?
これに関しては、本実験では回路の抵抗は「電源装置との接触抵抗」「導線の抵抗」「電源装置の内部抵抗」の合計ですが、恐らくは内部抵抗が主要な寄与をするでしょう。なので、内部抵抗をブラックボックスとして扱っていては結論は出ないと思います。例えば、コンセントに繋ぐタイプの電源装置の代わりに、化学電池の直列接続によって同じ実験をした場合に起電力はどうなるのか、検証してみたいところです。。。化学電池の場合も、あまりに急激に反応が進むと、溶液の攪拌が追い付かなかったり、反応物質が尽きてしまったりという理由で「内部抵抗」が実質的に増えてしまうことはあります。しかしその振る舞いは、電源装置の場合と同じではないと思われます。
- それだけの抵抗値変化を生じる温度上昇は現実的なものなのか?
1000℃のような高温になると金属が溶けてしまうはずだが、本当に温度変化による抵抗値変化だけで、1[V]程度の誘導起電力を20秒間維持するだけの磁束変化が起こりうるのか。 (←こちらが特に納得できないです)
他にもいくつか代替案が浮かびますが、いずれにしろ対照実験を行ってみないことには検証できないですよね・・・。 その点も含めて、本気で考えるならば、この実験を自分でやってみたいところです。。。
何かエレガントな解釈が思いつく方、いらっしゃったらコメントください(=゚ω゚)ノ