アイコの発生しないじゃんけん

じゃーんけーんぽんっ!!!


じゃんけんは、道具を使わずに手軽に、かつ公平に勝者を選び出すことができる方法として、とても優れているのですが、ひとつ欠点があります。それは、人数が多いとアイコが多くてなかなか勝者が決まらないことです。(合計人数が8, 9, 12人など、小さい約数のみ持つ場合には、2人ずつ(あるいは3人ずつ)ペアになって予選を行うこともできますが、その方法はキリの良い人数でない場合は公平になりません。)


具体的に、じゃんけんを1回だけ行って、代表者1人が選びだせる確率を見てみましょう。


2人 ・・・ 2/3
3人 ・・・ 1/3
4人 ・・・ 4/27

N人 ・・・  N / 3^{N-1}

このように、じゃんけんで勝者を選び出せる確率は人数が大きくなると急激に小さくなってしまいます。



そこで僕は、アイコの発生しないじゃんけんを考案しました。


2人の場合は、次のようになります。
AさんとB君は同時に「グー」または「パー」を出します(チョキを出してはいけません)。

  • 2人とも「グー」、または2人とも「パー」の場合はAさんの勝ち
  • 1人が「グー」、1人が「パー」の場合はB君の勝ち

と事前にルールを決めた上でじゃんけんを行うと、アイコが発生せずに一度で勝敗がつきます。


3人の場合は、AさんとB君とCさんが「グー」「チョキ」「パー」のどれかを選びます。

  • 「グー、グー、グー」「チョキ、チョキ、チョキ」「パー、パー、パー」「グー、チョキ、パー」の場合はAさんの勝ち
  • 「グー、グー、チョキ」「グー、パー、パー」「チョキ、チョキ、パー」の場合はB君の勝ち
  • 「グー、グー、パー」「グー、チョキ、チョキ」「チョキ、パー、パー」の場合はCさんの勝ち

というルールでじゃんけんをすると、アイコなしで公平に勝敗が決まります。



「それって、ホントに公平なの?」「どうやって4人以上に拡張するの?」と思った人のために補足。実は、これは以下のように数学的に考えられます。
N人でじゃんけんをする場合、それぞれのagentは {0, 1, 2, …, N-1} のうちのいずれかの数字をランダムに選びます。
N人の選んだ数字の和をNで割った余りが

  • 0ならばAさんの勝ち、
  • 1ならばB君の勝ち、
  • 2ならばCさんの勝ち、
  • ・・・

というルールを設定すれば、全agentについて対等になっていることも、アイコが発生しないこともすぐに分かると思います。
実際、上記の例では、2人の場合は ”0” =「グー」、”1” =「パー」を割り当てて、3人の場合は ”0” =「グー」、”1” =「チョキ」、”2” =「パー」を割り当てました。



人間の指は両手で10本あるので、11人以下でじゃんけんをする場合には少なくとも、この方法で簡単に勝者が決定できそうですね。(もっと言うと、それぞれの指を区別すれば 2の10乗=1024人まで許容できますね。もっとも、そんな大人数でじゃんけんする機会はないでしょうがw)



しかも、この方法は、大人数から1人だけ選び出す場合だけでなく、全員に序列をつける場合にも有効です。
N人でじゃんけんをして、「グー」「チョキ」「パー」の3種類が出てしまう確率は、\frac{2^N -3 }{3^N} なので、Nが大きい時には「勝者の組」と「敗者の組」に分ける(各組の人数比は任意)だけでも、指数関数的に多くの回数が必要です。
それに対して、本エントリーの方法を繰り返せば、N-1 回の試行で確実に順列が決定できるので、その点でも有用だと思います。