「リンゴ日和」の歌詞の解釈 (「狼と香辛料」エンディングテーマ)

巷では、狼と香辛料の2期がまもなく終わろうとしていますが、僕は先日ふと1期のエンディングテーマを聞きたくなりました。


この曲は歌詞が英語なのですが、非常に聞き取りづらいので、歌詞を検索したのですが、すると和訳を併記しているサイトをいくつか見かけました。
その訳が、個人的に納得できないものばかりだったので、本エントリーでは、この曲の解釈と和訳を紹介することに時間を割こうと思います。



肝心の英語版の歌詞なのですが、このブログに丸ごと転載すると違法になってしまうので、以下のサイトを参照してください。


【歌詞ナビ】

リンゴ日和 〜The Wolf Whistling Song  ♪  ROCKY CHACK
作詞 : chris mosdell
作曲 : 山下太郎 ・noe
http://www.kashinavi.com/song_view.html?37495


まずは意訳を提示した後で、なぜそのような意訳になったのか、直訳を介して説明していきます。(最初に長々と解釈を話すと、最後まで読んでもらえなさそうなのでw)



魔法がかけられたリンゴの実
わっちがどれだけ夢見たことか
ついにありつけたその幸せを
思う存分味わったんじゃ


ヌシもリンゴを食った暁には
太陽の御馳走を振舞われて
ピーナッツと一緒に踊って
別れ際には「こんにちは」じゃ


夜空に浮かぶお星様も皆
瓶につめて独り占めじゃ
だけどそれでは物足りなくて
もっと冒険をしてみたくて
もう少しおねだりしてもいいかや?
わっちは昔に行ってみたいんじゃ

もっと冒険をしてみたくて


突然話しかけてきたハクチョウに
思わず胸がときめいてしまったが
それでも立ち止まったりはせんかった
わっちはひたすら漕ぎ続けたんじゃ


幸運の青い鳥に囲まれて
人魚はクジラにまたがっていて

だけどそれでは物足りなくて
もっと冒険をしてみたくて
もう少しおねだりしてもいいかや?

わっちはもっと漕ぎ続けるんじゃ
もっと冒険をしてみたくて


ヌシもリンゴを食った暁には
バラのように真っ赤な地平線の
空を泳ぐスプーンを眺めながら
とろけるような月を味わうんじゃ


ヌシもリンゴを食った暁には
どこへでも連れていってやるぞ
たとえばこんな夜中でも太陽が
ダイヤモンドと化す場所へだって


夜空を飾るお星様も皆
瓶につめて独り占めじゃ
だけどそれでは物足りなくて
もっと冒険をしてみたくて
もう少しおねだりしてもいいかや?

わっちはもう我慢できないんじゃ
もっと冒険をしてみたくて
ヌシも興味を持ってくれたかや?
一緒に冒険する気になったかや?



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これ以降は、このような解釈に至った理由づけのために直訳を提示しておきます*1



魔女の木に生っている7つのリンゴ
そのリンゴは、私の中に植えるための7つの種を持っていた。
春には、私は魔法の曲を身に付けた。
そして、(曲と)一緒にスキップしながら、全員に対してその曲を歌った。


まずは、突然登場する「リンゴ」が、何を指しているのか不明瞭ですね。
後の文脈を読むと、そのリンゴが「私」を非日常の世界へと連れ出す役割を果たしたようですが、それがリンゴである必然性がピンときません。
辞書によると、"apple of one's eye"で「大切なもの(人)」という意味になるようですが、この文脈で意味を持つとは考えにくいです。
とりあえずは、狼と香辛料のヒロインであるホロがリンゴ好きだからだ、という程度の意味付けで先に進みます。


「7つ」という数字にも、「幸運の数字」という以上の意味を見出せませんでした。


"skipping along"は「一緒にスキップする」という意味ですが、「誰」と一緒にスキップするのでしょうか。
直後の"everyone"と一緒にスキップする、と捉えると、なぜ相手もスキップしているのか、など若干不自然なので、「身に付けた曲とともに」という意味だと思います。



リンゴの目を介して世界を見ました。
そして、太陽パイの一切れを、自分のために切り分けました。
ピーナッツ蝶と一緒に踊りました。
時間が経って、「こんにちは、と言いなさい。しかし、手を振って別れを示す身振りをしなさい」と(時間が私に対して)告げるまで。


「リンゴの目を介して」とは、魔女のリンゴを手に入れた「私」にも魔法が掛かって、周りのものが非日常な姿に見える、という意味です。


その非日常的な世界では、太陽をアップルパイのように切り分けることが出来たり、ピーナッツが蝶のように踊ったりするようです。
また、お別れの素振りを見せつつも、何故か「Hello(こんにちは)」と言うようです。



千個の砂糖の星を、瓶につめましょう。
そうしたら、口笛を吹きながら世界を巡りましょう。

口笛を吹きながら世界を巡りましょう。
あなたに言わせれば、私は少女の中の小さな狼よ。
そうよ、私は6月から5月へ行くつもり。
口笛を吹きながら世界を巡りに。


さっきまで過去形でしたが、ここからは未来の話になります。


非日常な世界では、夜空のたくさんの星を、砂糖のように瓶に詰めることだって出来るようです。


さらに、それが済んだら「口笛を吹いて世界中を巡ろう」と言っています。「口笛」で奏でるのは、非日常を体験するための「魔法の曲」ですね。


「少女の中の小さな狼」とは、「少女が抱いている、少し欲張りな感情」という意味です*2。「少女」とは「私」のことで、普段の「私」はそういう態度を見せないが、この世界では非日常を体験したいという欲求が全面に出てしまうようです。


これまで体験した非日常では飽き足りず、(6月から5月へと)時間を遡る旅までしたくなってしまいました。



私は道すがら、黄金のハクチョウに出会いました。
彼はハンサムな王子様で、私に話しかけてきました。
私は、昨日へと続く道を尋ねました。
私は船乗りで、漕いで(その時刻から昨日へと)離れて行きました。


1行目に"golden swan"とありますが、これには2つの意味が込められています。
もちろん、文字通り訳すならば「金色のハクチョウ」ですね。
それ以外の意味として、以下のようにも解釈できます。"golden"は「今をときめく」という用法にも使えて、さらに"swan"は「美しい人」という用法にも使えるようです。それを合わせると、「全盛の美女/美男子」という意味と解釈することもできます。
つまり、

  • これまでに経験した非日常な現象との並列で、何故かハクチョウなのに金色に染まっていた、という意味
  • 私に話しかけてくれたことで、ただのハクチョウが、まるで全盛の美男子のように見えた、という意味(次の行の"handsome prince"と呼応している)

の2通りに解釈できます。


4行目の、"I was a sailor"は、「私は船乗りです」と言うよりは、「まるで船乗りのように」といった感じですね。
また、"through the day I sailed"は、「一日中漕ぎ続けた」というよりは、「一日前へ遡るように漕いだ」という感じだと思います。
今は「今日から昨日へ」と一日だけ過去へ移動したいので、文字通り海や川を移動しているわけではなく、時間を過去へと遡る旅を船旅に喩えているようです。



クジラにまたがった人魚がいる、青い鳥の海を、私は漕ぎました。
口笛を吹きながら世界を巡りましょう。
口笛を吹きながら世界を巡りましょう。
あなたに言わせれば、私は少女の中の小さな狼よ。

そうして、私は不思議の道を行く。
口笛を吹きながら世界を巡りに。


1行目の"bluebird"は、直訳は「青い鳥」ですが、幸運の象徴ですね。


ここで新たに「人魚」という非日常な存在が登場しますが、「私」はまだまだ不思議を探したいようです。



リンゴの目を介して見ると、
バラの色に染まった地平線が見えて、
そこには銀製のスプーンが空を飛んでいる。
今にも溶けそうなマーマレードの月を食べましょう。


さらなる不思議として、「地平線が(バラのように)真っ赤に染まっている」「スプーンが空を飛んでいる」「月をマーマレードのように食べることができる」と続きます。


"silver spoon"には「富」という意味もあるようですが、多分関係ないでしょう。



リンゴの目を介して見ると、
何百万マイルも見える。
太陽は、夏の日の夜に輝くダイヤモンドです。


ここで、「何百万マイルも見える」とあります。僕の計算によれば、地球の直径が約8百万マイルなので、「何百万マイル」とは「世界中見渡せる」程度の意味だと思います。


最後の行は、

  • この世界で起こる不思議な現象のひとつとして、夜中でも太陽がダイヤモンドのように輝く

と解釈することもできるし、

  • 何百万マイルも離れた地球の裏側(つまり夜(だと感じている時刻)にも太陽が輝いているような場所)まで見渡すことが出来る

という意味にも解釈できます。



千個の砂糖の星を、瓶につめましょう。
そうしたら、口笛を吹きながら世界を巡りましょう。
口笛を吹きながら世界を巡りましょう。
あなたに言わせれば、私は少女の中の小さな狼よ。

そして、私は行くつもり。(いてもたってもいられない)
口笛を吹きながら世界を巡りに。
さあ、口笛を吹きながら世界を巡りましょう。
口笛を吹きながら世界を巡りましょう。


大部分が繰り返しですが、"I'll go"の直後が"I can not stay"に置き換わって、何度も登場した"whistle round world"の前に"Let's"が挿入されています。
「こんな楽しい世界への旅が楽しみでいてもたってもいられない」「あなたも一緒に行きましょうよ」という意味が込められていると考えられます。

*1:直訳とは言っても、"O", "Oh"は、リズムを整えるために入れているだけなので、訳から省きました。

*2:英語の"wolf"には確かに「貪欲な」と言う意味があるのですが、悪い意味で用いられる印象を僕は持っているので、実はここの「欲張りな」という用例に若干違和感があります。単にホロが狼だから、という可能性もありますね・・・。